本:大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清/松元崇/中央公論新社

高橋是清が主人公のようだが、高橋是清を絡めつつ、明治維新から二二六事件までの、日本の財政について書いている。借金漬けだった、明治維新日清戦争では賠償金を取れたが、日露戦争では賠償金を取れず財政的には負け戦だった。明治憲法下でも国会開設後は、民党と藩閥政府は激しい議論を交わし、予算がすんなり通ることは無く、増税を試みるも藩閥内ではあるが何度も政権交代が起こった。日露戦争で負った外債の返済に苦しんでいた日本だが、第一次世界大戦が起こると、戦争に巻き込まれなかった日本は借金を返し、債権を負う立場から、債権を貸す側に移った。また農業国から工業国へと移行した。しかし、貸した先が悪く、大戦後のバブルの崩壊後に債権は貸し倒れになり、国内会社は続々倒産し不況になった。そんな中、一等国になったと思った民衆は、不況で財政破綻に苦しむ政権側の政策に批判的になる。緊縮財政の元、軍縮を行い、やっと一息つけるかと思った頃、関東大震災で国民総生産の三分の一を失い、また借金漬けになる。昭和の恐慌は、工業国化した日本では相対的に、都市に比べ農村へ過大な増税となり、農民が疲弊する。そして満州事変が起きると、民衆は軍部を次第に支持しはじめる。軍部のどんどん過大になる予算請求に高橋是清を初めてする財政家は、対決することになる。二二六事件で高橋是清が殺害された後は、軍部が満州、中国で、勝手に振舞い、財政を無視した政策を行い、満州は発展するも国内は疲弊し、借金漬けになり、軍部の失政を欧米のせいだと信じた民衆は軍部を支持し、第二次世界大戦に突入し、敗戦国となる。面白かった。