本:史記戦国列伝の研究/藤田勝久/汲古書院

史記の戦国列伝の幾つかを取り上げて、その成り立ちを研究している。それによると、司馬遷による創作物はなく、秦から伝わる秦記を軸として、他に伝わる記事資料を使い、作っているとのこと。その為、秦に近い国ほど情報が豊富で、燕や斉など遠国ほど情報が少なく、記事が少なくなっているとのこと。また司馬遷は秦が中華統一をして、その後を漢が継いだというのを天命として捉え、そのストーリーに沿って記事を取捨選択している。他の列伝などでも、人物が現れ、隆盛し、滅亡するというストーリーに沿って記事を取捨選択しているらしい。また司馬遷が見聞できた資料は、漢に伝わった資料の内でも、太常という史が属している組織に伝わる資料を使っていて、丞相府などに伝わる資料は使ってないらしい。