本:古田の様/金子達仁/扶桑社

古田敦也の関係者に対するインタビューや対談などからなる、学生時代から現役引退までを描く。矢野輝弘との対談では古田がいかにすごいキャッチャーかが語られる。小学校時代、中学時代、高校時代、大学時代、の話では、古田がどんどん才能を開花させる話が書かれている。大学進学時は野球を辞めようと思っていたが、高校の監督と大学の監督の共謀で立命館に進学したらしい。大学卒業時は、プロ球団から指名の約束を得ていたが、反故にされ、がっくりした話が載っている。兼任監督時代の苦闘、球界再編騒動での選手会長としての苦闘などが、描かれている。おもしろかった。

本:大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清/松元崇/中央公論新社

高橋是清が主人公のようだが、高橋是清を絡めつつ、明治維新から二二六事件までの、日本の財政について書いている。借金漬けだった、明治維新日清戦争では賠償金を取れたが、日露戦争では賠償金を取れず財政的には負け戦だった。明治憲法下でも国会開設後は、民党と藩閥政府は激しい議論を交わし、予算がすんなり通ることは無く、増税を試みるも藩閥内ではあるが何度も政権交代が起こった。日露戦争で負った外債の返済に苦しんでいた日本だが、第一次世界大戦が起こると、戦争に巻き込まれなかった日本は借金を返し、債権を負う立場から、債権を貸す側に移った。また農業国から工業国へと移行した。しかし、貸した先が悪く、大戦後のバブルの崩壊後に債権は貸し倒れになり、国内会社は続々倒産し不況になった。そんな中、一等国になったと思った民衆は、不況で財政破綻に苦しむ政権側の政策に批判的になる。緊縮財政の元、軍縮を行い、やっと一息つけるかと思った頃、関東大震災で国民総生産の三分の一を失い、また借金漬けになる。昭和の恐慌は、工業国化した日本では相対的に、都市に比べ農村へ過大な増税となり、農民が疲弊する。そして満州事変が起きると、民衆は軍部を次第に支持しはじめる。軍部のどんどん過大になる予算請求に高橋是清を初めてする財政家は、対決することになる。二二六事件で高橋是清が殺害された後は、軍部が満州、中国で、勝手に振舞い、財政を無視した政策を行い、満州は発展するも国内は疲弊し、借金漬けになり、軍部の失政を欧米のせいだと信じた民衆は軍部を支持し、第二次世界大戦に突入し、敗戦国となる。面白かった。

映画:ゴールドボーイ

中国の原作&ドラマ化の邦画化。監督は金子修介。舞台は沖縄。事業家の婿養子(岡田将生)の東昇が、養父母の娘の静(松井玲奈)に愛人がいるので離婚して欲しいと言われたことから、養父母を崖から突き落とす。誰にも知られない筈だった。しかし、シングルマザーの子供のちゅ学生の朝陽(羽村仁成)の元を、幼馴染の浩(前出耀志)とその義妹の夏月(星乃あんな)が尋ねてきて、一緒に海辺で写真を撮ると偶然、崖から人が落ちていく動画が撮れた。3人がそれぞれ、色んな理由を抱える中、朝陽をリーダーに昇を脅迫して6000万円を奪おうとする。昇と3人の少年少女との駆け引き、静に頼まれて昇を疑う、従兄弟の県警の東厳(江口洋介)など、絡み合ってストーリーが進んでいく。面白かった。岡田将生の悪役ぶりが良かった。少年少女の3人組も良かった。星乃あんなが、良かった。

本:桂太郎 外に帝国主義、内に立憲主義/千葉功/中公新書

桂太郎薩長藩閥政治家の中で、1.5世代にあたるという。桂は上士出身で最初は木戸孝允を領袖として庇護下にいたらしいが、木戸の死後に長州陸軍閥の領袖である山縣有朋の庇護下に入る。長州閥軍人として順調に出世して、ついに首相にまで上り詰める。そして、日露戦争下で政府を率い、戦争を終結させる。このことに自信を持った桂は、次第に山縣の影響から抜け出そうとする。日露戦後、政友会との約束のもと西園寺公望に首相の座を禅定したが、西園寺の政府運営には常に批判的であったらしい。そして第一次政権で自信を持った桂は、第二次政権で大蔵大臣を兼務し、財政問題に取り組み、その手腕に自信を持つ。第一次、第二次政権とも政友会と妥協しながら政権を運営した桂は、軍人から政治家へと転身を試み、第三次政権では政党を立ち上げるが、多数派を作れるという見込みは挫折し、少数政党となり、憲政擁護運動の動乱の中、辞職せざるを得なくなる。辞職後も政党の立ち上げに取り組んでいたが、がんにより死去する。なかなか面白い本だった。

本:恩送り 泥濘の十手/麻宮好/小学館

捨て子だった、おまき。岡っ引きの夫婦に引き取られて、育てられるが、丙午生まれのせいで捨てられたのだと言われ、引きずっていた。そして、父親の岡っ引きが行方不明になり、父を探すために、同心の飯倉に、手下の亀吉、盲目の要と共に、手下にしてくれと願い出る。そのうち、不審な火付が続き、それと父の失踪を絡めて、飯倉と共に捜査する話。面白かった。

本:相性/三浦友和/小学館

三浦友和の半生をロングインタビューを元に語り下ろした本。前作と被るところもあるが、その後の60歳になるまでの三浦友和が描かれている。結婚や子供の誕生を機に変わったとか、相米慎二監督との出会いでの変化とか、二人の子供に対する育て方とか、面白かった。

本:被写体/三浦友和/マガジンハウス

大スター、山口百恵と結婚してしまったために、山口百恵は引退下にも関わらず、マスコミの猛烈な取材合戦に晒され続けた1978年から1999年までの20年間の話。マスコミの容赦のない、人権無視の取材が書かれている。